(1)どんなプロジェクト?
2018年5月から僕がtwitterで展開中の「#ひよこアレンジプロジェクト」。一言で言えば初級者でも弾けるソロギターアレンジをするってことなんだけど、そこには僕の想いが詰まってます。そのあたりを改めて書いてみたいと思います。
好きな曲を自分で演奏出来たら楽しいですよね。そしてソロギ弾きなら、押尾コータローさんのようなプロのギタリストのオリジナルを弾いてみたいと思う人は多いと思います。でもプロが自分で弾くために作った曲が、そんなに簡単であるはずはなく、初心者・初級者の方にはハードルが高いんじゃないでしょうか。
クラシックギターは初級者でも弾けるように作られた曲がたくさんあります。「禁じられた遊び」は有名ですよね(中間部は難しいけど)。
ピアノも同様、バイエル・ソナチネ・ソナタといった超有名な練習曲ないしレベル別の曲集があって、初級者から音楽が楽しめる構造が出来上がっています。また、ショパンが好きだけど難しくて弾けないっていう人向けに「やさしいショパン」なんていうアレンジ譜が発売されてたりもします。
ソロギターの世界はどうか。この観点では南澤大介さんの存在が大きいですね。音楽的な練習曲を作られたり、レベル別のアレンジ譜を作られたり。南澤さんがいなかったらソロギ人口は間違いなく今よりもっと少なかったと思います。
南澤さんに限らずアレンジものなら初級者向きの譜面も沢山あリますね。でも、押尾さんの曲が弾きたい!っていう初級者の望みは叶わない。練習してスキルアップするしかないとしたら、いつ弾けるようになるかわかりません。
そこで僕は考えました。押尾さんの曲を極力簡単に弾けるようにアレンジしてみようと。僕が押尾さんの曲を弾いて楽しいと思う気持ちを、より多くの人が感じられたらいいなって。押尾さんが好きでギターを始めた人が、これをきっかけに楽しみながら練習してくれたら嬉しいなって。それが「#ひよこアレンジプロジェクト」です。
(2)需要はあるのか
こんな感じで自分の中で盛り上がってたんだけど、ひよこアレンジの需要がなかったら意味がない。ソロギターのオリジナル曲は、伴奏含めた一音一音の重なりで完成しているものだから、それを崩していいの?っていうのは気になった所。
そこでtwitterで質問してみました。
自分が押尾さんファンだとしたら、
①弾けなくても原曲にチャレンジするのが楽しいんだよ
②弾ける喜びのために積極的に簡単にしちゃってもいい
結果は①が48%、②が52%。回答数が44名と多くないので、これで全ては計れないけど、ひよこアレンジ(②)は一定の支持を得ました。実際、twitterで興味を示してくれた人はたくさんいたから、是非これは実現させようと思いました。
曲選びも重要です。何でもかんでもひよこ化出来るかというと、そうでもない。ひよこアレンジでも押尾さんの曲の良さを損なわないこと、これが一番大事。となるとメロディだけ演奏しても綺麗に聞こえるような曲がひよこアレンジ向きになります。ストローク系の曲は左手の運指を簡略化するのが難しそうなのでパス。そういう意味で、押尾さんのバラードはぴったりでした。
これまでにひよこアレンジした曲は、押尾さんの「ちいさな輝き」と「夕凪」。それと番外編でソロギ曲じゃないんだけど、久石譲さん作曲の「山の向こうへ」という曲です。
(3)どうすればひよこアレンジに?
ギター演奏の何が難しいかは人によって違うと思うけど、どうすればひよこアレンジになるか(易しい楽譜になるか)、僕なりに考えてみました。
・なるべくローポジションで
・ポジション移動は最小限に
・同時に押弦するのは2音まで
・同時に弾くのも2音まで
(右手の p,i,m,a を自在に扱うのは難しい)
・押弦変更する前に余裕を作る
・押弦の範囲は3フレット以内
(左手のストレッチを最小に)
・1曲の長さを短く
(練習も演奏も気力が続くように)
ひよこ第一弾の「ちいさな輝き」は実際に上の条件でアレンジしてます。弾いてくれた方、どうだったでしょうか。他にも簡略化するポイントがあれば教えてほしいなと思います。尚、左手の小指を使わないように出来ないかも考えたんだけど、それは無理そうなので条件から外しました。
具体的なアレンジ方法は以下です。
①Cメロ等を省略(曲を短く)
②音を抜く(抜けそうな音は積極的に抜く)
③弾きづらい音を別な音に変える
更に、邪道と思いつつ「ちいさな輝き」はキーも変えました。オリジナルキーは「A」だけど、「G」に変更したら運指が楽になったので変えちゃいました(2カポでオリジナルと同じ音程になる)。但しこれは一つ問題があります。ひよこアレンジの延長線上に本物があるわけではないということ。上達して本物が弾きたくなったら、キー「A」の運指で一から練習し直しになっちゃうんですね。ここは割り切ってもらうしかありません。
ちなみに上に書いた②③は、ソロギ曲を僕自身がコピー演奏する時もやることがあります。僕は元々、無理して原曲通り・楽譜通りに弾くより、間違えずにスムースに弾けるほうがいいとの考えなんです。
(4)ひよこアレンジの使い方
ひよこアレンジの2曲です。動画の最後にTAB譜を付けてあります。
ひよこアレンジの使い方はもちろん自由なんだけど、こんな風に使ってもらえたら僕としては嬉しいです。
まず、押尾さんの曲が好きだけど原曲は難しくて弾けないって方、是非ひよこアレンジでチャレンジして欲しいです。簡単アレンジであっても押尾さんの曲が弾けた感を味わえるようにしたつもりです。
初級者向きの楽譜を探していて、上に載せた曲をいいなと思った方、是非弾いて欲しいです。
ある程度難しい曲も弾けるけど、間違えずに楽に弾ける曲もレパートリーに加えたいなと思ってる方、是非弾いて欲しいです。僕自身も「夕凪」の原曲を弾くことは今はもうなくて、ひよこアレンジばかり弾いてます。弾いてて気持ちいいです(笑)。
まだ一度も演奏動画をSNSに投稿したことがない方、是非ひよこアレンジを練習して投稿して欲しいです。投稿する目標があるとモチベーション上がります。投稿したら、きっとギター好きの人が反応してくれます。今よりもっとギターが楽しくなって、もっと練習するようになって、もっと上手くなります。きっと。
ひよこアレンジの楽譜には、左手の運指(どの指で押弦するか)も書きました。どこまで音を伸ばすか(どこで左指を離すか)や、消音した方がいい音はどれかも書きました。是非一度は楽譜通りに弾いてみて欲しいです。どういうことに気を使うとよいか(伸ばすべき音は伸ばす、切る音は切る)がわかると思います。その上で自分の思うように、自分の弾きやすいように運指を変えるのは自由です。
そして、少し余裕がある人は、音の繋がりや音の強弱や間合いの取り方などを考えて、自分なりに表情を付けていくのも楽しいと思います。難しい曲だと弾くことに精一杯になってしまうけど、易しい楽譜なら出来るかもしれませんよね。
ひよこアレンジでギターを楽しんでもらえたら and/or ギターに更に真剣になってもらえたら、僕はとっても嬉しいです。僕はギターが好きだから、同じような人がいることが嬉しいんです。
楽譜の表記については別のBLOG「ソロギターの記譜法を考える」も参考にしてください。
時々「音符のそばに書いてある数字は何?」 って質問されることがあるので説明しておきます。
音符のそばに書いてある 0~4 の数字は、どの指で弦を押さえるかです。0:開放(押さえない)、1:人差し指、2:中指、3:薬指、4:小指。親指で6弦を押さえる場合、僕は「T」で表記してます。まずは楽譜どおりに弾いてみて、自分に合わない所とか、違う運指のほうが響きがいい所とかがあれば変えちゃって構いません。
p, i, m, a は右手の運指。p:親指、i:人差し指、m:中指、a:薬指 です。右手の運指は人によってスタイルに違いがあって、3弦を人差し指・2弦を中指・1弦を薬指で固定して弾くやり方とか、なるべく薬指を使わないようにする弾き方とかもあるので、僕の楽譜に書いてある右手の運指は参考程度に見てもらえればいいです(そういうこともあって最近は右手の運指は書かないようにしてます)。