(1)はじめに
開放弦を弾くとしばらく音が持続します。押弦している場合も左指を離さなければ音が続きます。だからアルペジオなど、1音ずつ別々に音を出していっても、それらの音が重なり合っていく。更に弾いてない弦の倍音も加わり複雑な響きをする。これがギターの美しさですよね。
何当たり前のこと言ってるんだって感じだけど、管楽器は基本単音だし、バイオリンだって意識して複数の弦を同時に弾かなければ音は重ならない。ピアノも複数の鍵盤を押さえ続けなければ音は重ならない(サスティンペダルを踏めば別)。別々に弾いた音が順々に重なって響いていく楽器ってそんなに多くないと思います。
これがギターの特徴であり良いところなんだけど、時には響いて欲しくない音が鳴り続けてしまうことがあります。そんな時に必要になるのが「消音」ですね。
ピアノもサスティンペダルを踏むと音が鳴り続け、音が重なっていきます。もし、ピアノでサスティーンペダルを踏みっぱなしにして弾き続けたらどうなるか。音が濁るし、締りのない演奏になってしまうと思います。ギターで消音を意識しないのって、これと同じとも言えるのです。
(2)目的から見た消音の種類
①ストロークでの消音(ミュート)
ストロークの時に鳴らしたくない音、余分な開放弦などが鳴ってしまうのを防ぐために、鳴らしたくない弦に左指を触れて「ミュート」しておく。例えば、ストロークした時に6弦が鳴ってしまわないように、左親指を6弦に軽く触れておくなど。
これは②③の消音とは意味が違うので、今回の話からは除外します。
②休符のための消音
スタッカートで音を切る。曲の途中で無音部分を作るために音を止める。曲の最後で鳴ってる音を止める。これらは消音する必要があることが明らかだし、楽譜にも指示があリますね(スタッカートや休符の記号)
③放っておくと鳴り続けてしまう音を止める
開放弦を弾くとしばらく音が鳴り続けます。これがいい時もあれば悪い時もある。音を止めたい時は意識して消音しないといけません。今回のメインテーマはこれです。
押弦してる場合は、左指を離せば音が切れるので、それが消音になります。一般的にこれを「消音」とは呼ばないかもしれないけど、消音と同じ意識を持つ必要があると思います。押弦してる左指をどのタイミングで離すか? 離さないと次の音を押さえられないと言うのとは別に、意識して早めに離したほうがいいこともあります。この話は奥が深いので、また別の機会に書いてみたいと思います。
(3)消音の方法
消音の方法は大きくわけて二つ。
一つは、押弦している左指を離す(押弦の力を緩める)ことにより音を止める方法。特に意識してやるのはスタッカートの時ですね。尚、完全に指を弦から離す方法だと、左指を離した時に開放弦の音がなってしまうことがあるので要注意です(プリングオフと同じ理屈)
もう一つは左指や右指あるいは右手の側面などを鳴っている弦に触れて消音する方法。これが「消音」という言葉のイメージに合うものかもしれません。鳴り続けてしまう開放弦の響きを止めたい時はこの方法になります。スタッカートや休符を入れたい時も使います。具体的な方法はいくつかあります。
①空いている左指で消音したい弦に触れる。よく使うのは6弦を消音したい時に左の親指を6弦に軽く触れて音を止める方法。
②押弦している左指を寝かせて隣の弦に触れる。例えば、4弦開放の「レ」の次に5弦3フレットの「ド」を弾くパターンで、5弦3フレットを押さえる時に、その左指を寝かせて4弦に触れ、4弦開放の「レ」を消音するなど。消音しないと「レ」と「ド」が意図せず同時になってしまいます。
③右指を消音したい弦に触れる。スタッカートなら弦を弾いた直後に、同じ右指を同じ弦に再度素早く触れて消音する。まさに右手の指で音を止めるイメージです。
④右手親指の裏(左側面)を使う。例えば、6弦開放の「ミ」の次に5弦開放の「ラ」を弾くパターンで、右手親指で5弦を弾く瞬間に、その親指の裏を6弦に触れて、6弦開放の「ミ」を消音するなど。これもよく使いますね。
⑤右手の小指側の側面全体や、親指の左側側面全体などで弦に触れる。曲の途中で無音部分を作りたい時や、曲の最後など、1~6弦全部の響きを止めたい時などに使う。
(4)どんな時に消音が必要か
消音の方法はわかったとして、重要なのはどの音を消音すべきかですよね。消音しないことによってどういう問題が生じるか、代表的なケースを書きます。
①コードの構成音以外の音が混じり、意図した和音の響きにならない
②メロディーが和音(アルペジオ)のように聞こえてしまい、メロディーラインが浮き上がらない(特に下降のメロディーライン、例えば1弦開放から2弦に移る時などに1弦が鳴り続けるケース)
③ベースラインがクリアにならない(例えばベースが6弦開放から5弦に移る時などに6弦が鳴り続けるケース)
④休符が表現されず、締まりのない・切れの悪い演奏になる
消音を気にせずに弾いた時に、上のような問題が発生していることに気付けば、その原因となっている音を消音することになります。
なかなか文章で説明するのは難しいので動画を見てください。イヤホンかヘッドホンで聞いたほうがよくわかると思います。題材は押尾コータローさんの「風の詩」。上記②①③の実例を説明してます。
尚、動画以外にも消音したほうがよい箇所があるかもしれません。また、押尾さん本人がどうしているかは研究していません。僕の感性で消音が必要と思った部分を紹介しました。
ちょっとわかりづらかったかも…
今回やった消音は、やらなくてもあまり問題ないというか、逆に消音しないほうが気持ち良い響きがするっていう人もいるんじゃないかと思います。このあたりは、自分の耳で聞いて、いやな音が鳴ってると思ったら消音すればいい。人それぞれ、弾き方が違って良いと思うので。場合によっては、弾いてない弦で鳴っている倍音を消音したほうがよいケースもあったり、消音は奥が深いですね。
以上長々とかなり細かい話になりましたけど、こんなことにもこだわって演奏するのも楽しいんじゃないかなって思い、紹介してみました。
ここまで読んで、動画見てくださった方、ありがとうございました!
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